目覚まし時計の音で目が覚める。
レースカーテン越しに差し込む日差しが、
朝の訪れを静かに告げていた。
「6時30分か…。」
眠い目をこすりながら、ベッドから体をずらし立ち上がった。
階段を降り、はなまるの様子を見に行った。
「はなまるー、おはよう。」
はなまるは朝起きたばかりなのか、少し眠そうだが、
こちらを見て尻尾を千切れるくらいっ振っている。
いつも通りトイレトレーの上にある💩を片付けて、
トイレシートを変えてあげる。
「散歩行くか!」
正直、もう一度布団に戻りたい気持ちはあった。
冬の朝は寒い。
寝巻に使っているスウェットの上に、
ウインドブレーカーを履き、
ネックウォーマーを身に着け、ダウンを羽織る。
はなまるをケージから出し、
服を着せ、ハーネスを付け、スヌードをかぶせる。

これが本当に難儀で、
すべてを敵とみなしているはなまるは、
すべてに攻撃をしかけ、
服を着せようとすると手を噛み攻撃をしてくる。
やっとこさすべての装備を身に着けさせると、
最後にリードを付けて準備完了だ。
「はなまる、いくぞ。」
玄関を出ると、今朝の気温は3℃という事で、
肌を切るような冷たい空気に顔をしかめながら、
僕ははなまると進みだした。
はなまるはまだ6か月で、散歩トレーニングは熾烈を極める。
あっちへ行ったりこっちへ来たりはもちろんのこと、
すべての電柱のにおいを嗅ぐことがDNAに刻み込まれた使命であるかのように、
飼い主とはなまるをつなぐリードは張り詰め続けていた。

大丈夫。上腕二頭筋はそのために鍛えてある。
インクラインダンベルカールに使用しているダンベルの重さは7キロに突入した。
最初の5分間は、自由にさせると決めているので、
このように自由に歩かせている。
5分経ってからは、散歩トレーニングの開始だ。
飼い主より先行し、リードをピンと張らせたら一度止まり、
リードを緩めた状態にしてから再度歩を進めていく。
最初のうちはほとんど前に進めないが、
しばらくするとだんだんと学んできたのか、
リードがたるむ瞬間が増えてくる。
そこですかさず、ポケットに小分けに入れておいた、
「ママクック」を1粒食べさせ、
「えらいじゃん」と、人の目を気にしながら小声でつぶやく。
散歩にはいくつもの試練が待ち構えている。
その筆頭が、「人」だ。
はなまるは、すべての人間が自分のことを可愛がってくれる存在であると認識しているため、
前から人が歩いてくるのを見ると、進むのをやめる。
「おい、いくぞ」
と、リードをくっくっと引っ張っても、
まるで大木を引っ張っているのではないかと錯覚するほど、
はなまるは深く、地面に根を張っている。
当然自分を撫でてくれるわけもなく、
そのまま人とすれ違うのだが、はなまるは決してあきらめない。
撫でてもらう事こそが至上の命題であるアメリカンコッカースパニエルは、
通り過ぎた後も、
「まだ撫でてくれる可能性は残っていないか」
確認を怠らない。
次なる試練は、やはり「犬」だ。
人は諦めててくれたか…。
そう思った矢先の出来事だった。
前方から、犬が歩いてくるのだ。
もうはなまるは次なるターゲットに狙いを定めている。
呼吸は荒れ、リードに伝わる興奮も絶好調だ。
「おはようございます。」
飼い主の方とあいさつを交わし、
犬同士を、軽く交戦させる。
「その帽子、あったかそうですね。」
「たれ耳ちゃんなので、耳が汚れないようにつけてるんです。」
「そうなんですね。」
といった会話が繰り広げられている傍らで、
はなまるは意外と紳士だった。
決してとびかかろうとはせず、
相手との距離をうかがっている。
まるで、自身が生態系のどの位置にいるのかを、
静かに確かめているようだった。
「ありがとうございました。」
あいさつを交わし、また前に進んでいく。
着実に、はなまるは社会性を身に着けている。
感動している僕をよそに、
はなまるは次の電柱に一直線だった。
成長と現実は、だいたいいつも同時にやってくる。
わが子の成長に胸を熱くしながら、
僕は再び、散歩トレーニングへ戻った。
犬にとっての試練があるのであれば、
当然その「飼い主」にも次なる試練が用意されているものだ。
試練は、乗り越えられないものには与えられないという。
それは本当だろうか。
僕には、どうにも疑問に思えてならない。
はなまるが試練を乗り越え、
我が家への凱旋を済ませると、
当然待っているのが、「足ふき」という名の儀式だ。
玄関の段差に腰掛け、
はなまるを膝の上にのせ、
シャンプータオルで足を拭き始める。
がぶ。
特に前足を拭くのが大変だ。
肉球の一つ一つ、また毛についた黒い何か
ー本当に何がはなまるの足についているのだろうー
を丁寧に取り除き、これを4本分だ。
4本分の傷を、僕の手に新しく刻みこみ、
今日の散歩は、静かに幕を下ろした。
僕の手に傷をつける担当者であるはなまるは、
何事もなかったようにケージの中でご飯を待つ。
傷職人は、朝のひと仕事を終え、腹を減らしているらしい。
僕は自分のやるべきことを瞬時に理解し、
いつあげているポチ~ザドッグフード~の封を開け、
いつも使っているカップ1杯と0.2杯分を、
ステンレス製の深皿へと移す。
そしてそのポチ~ザドッグフード~の上に、
デビフ ささみ&レバーペーストを50グラム、
これを均等になるように混ぜ合わせ、
はなまるに差し上げる。
ここからは飼い主のターンである。
「はなまる、おすわり!」
なぜ、ご飯を前にした犬はこんなにも飼い主に従順になるのか。
「待て!」
やっと飼い主の目を見ながら待てができるようになったはなまるへ、
「よし!」
解放の合図。
爆食い。
耳汚れ防止のために着けている、
ダイソーのりんごちゃんを身に着けた「可愛いはなまる」と、
目の前で暴食している犬の姿が結びつかず、
脳が理解を拒むが、これは現実だ。
これが、はなまるとの朝の一幕である。
僕の手の傷は増えていくが、
はなまるの食欲と愛嬌は、今日も減る気配がない。
明日の朝もきっと、
同じように傷をつけられ、
同じようにご飯を用意するのだろう。
僕の愛情もまた、減る気配はない。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
あさんぽのリアルを、小説風に書いてみました!
なかなか共感できる内容になっていたのではないでしょうか。
あさんぽはわんちゃんにとっての1大イベントですが、
本当に大変ですよね。
でもそんな大変なあさんぽで感じる犬の成長も、
かけがえのないものだと思います。
それでは、次の記事で!



コメント